甲・乙類の音韻変化について
ia>e(甲類)、ai>(乙類)、i> 、ua>o(大野 1978a
p195-9、218-221)など、通説とされている音韻変化は間違っています。もし皆さんが自分の舌と口でiaやuaなどと発音し、その音を自分の耳で聞くならば、それらの発音がそれぞれeやoなどにならないことがよくわかるはずです。
《甲類》 《乙類》
i (<u+i)
e(<o(甲類)+i) (<+i)
o(<a+u) (=)
1.ui>の変化(例:「尽く」+「い」>「月」(tuku+i>tuk))
2.i>の変化(例:「明け」(ak+i>ak)。「竹」(tak+i>tak)。「歎き」(nag+iki>nagki))
3.oi>eの変化(例:「ド厳い」>「でかい」(do+ikai>dekai))
4.ai>e:の変化(例:「でかい」>「でけー」(dekai>deke:))
(いまでは通説となっていますが)大野氏の考えられているai>の変化は間違っています。上の例でわかるように、+iは(乙類のエ)に、a+iはe:(長音のエ)に変化したのです。このようにaiがe:に変化している事実をすなおに認めれば、漢字音の研究で推定されているが中舌であることの理由をyの介入(a-y-i:大野 1978a p196・p218-9)といった無理な解決をさがす必要はないのです。中舌音への変化をiと考えた、その音(乙類のオ)については、下二段活用の「明け」の語末音(乙類のエ)や未然形の「明か」の語末音aなどとの関係(乙類の(=)とaの交替についてはこちらも)が問題になりますが、これはまたのちの更新(「動詞活用の起源について」)で詳しく考察します。