「日本語式のモーラ分節になれていない言語の話し手が(筆者注:ここまで原著には傍点あり。)、[sta]のような音を、音声学的にも、音韻論的にも、/sta/のように聞き、また/sta/のように文節もする」(橋本萬太郎 1981:357)事実から、ssta→ssta→staのような変化ではなく、ssta→staのように直接変化したのです。そのため途中音ssta(→ssta)→staのように( )でくくっておきました。そしてこの喉頭化音は九州南部の方言([ku]:「靴・釘」)にみられるところから、[sta]を/sta/のように聞き、文節する「日本語式のモーラ分節になれていない言語の話し手」(同上)とは、橋本萬太郎氏がそれとなく考えられておられる外国人ではなく、ほかならぬ日本人です。つまり上のような変化を日本語の中に想定することができます。
また上の「舌」の変化にあらわれたsstaの真中にあるsこそ、古代語にみられた副助詞シ(つまり係助詞ソ)なのです。ずっと先の更新(「係り結びとは何か」)でこのことを明らかにしていきます。