「ハ行音の問題」について
(1999.09.03
更新)
このページは「ハ行音の問題」のつづきです。
D.問題3
13.ハ行音はF以下、なぜ違った変化をしたのか
E.問題4
14.なぜハ行音は変化をしたのか
F.日本語とオーストロネシア語族にみられるイ・シの相関について
G.あとがき
G.あとがき
今回は日本語起源論の解決のためのひとつの試みとして、ハ行音の問題をとりあげてみました。今では通説になってしまったハ行頭子音のp→F→hの変化を「円唇退化」、huに変化せずFuにとどまった理由として「円唇性」、またhi→iの変化を「口蓋化」といったもっともらしい学術用語で説明がなされています。またハ行転呼音の変化に対しても「ハ」が「ワ」に変化したこと、ワを除くワ行音がア行音に変化している事実からFV→wV→Vの変化が起こったと考えられてきました。しかし通説にみられるこのような安易な考察では「ハ行音の問題」が解けるはずがありません。今回ハ行頭子音がp→phに変化する原因やハ行転呼音のpV→pV→wVの変化についてはっきりと答えをだすことができませんでしたが、若い方々にしなやかな、そして目をみはる考察を期待して通説に対して私がどのような点に疑問を感じたか、またどのようにしてその疑問を解いていったのかを、このホームページに書いてみました。
ここまでの考察で明らかなように、「日本語起源論」を解決するために今必要なことは、日本語の表面的な類型学特徴と同じものを他の諸言語にもとめ、確かとはいえそうもない音韻対応をさがしもとめる、今までの方法論に終止符をうつことです。そしてまた現在では「日本語起源論」の主流となりつつある、いわゆる北方の諸言語との言語混合の考えを認め、「言語純血主義的(単一血統的)発想からの転換」(崎山 平成2:120)を促そうとする日本語形成論をも排するべきです。いうまでもないことですが、日本語起源論の解決のために今なさねばならないことは、動詞活用・連濁・上代特殊仮名遣い・係り結びやハ行音の問題、あるいは「ちゃがま/ちゃまが」(茶釜)にみられる音韻転倒といった日本語に見られる珍しい事実の起こる理由を解くことです。そしてそれらの原因を解きあかすことによって、そこから得られたものを再構されたオーストロネシア語族の何かと比較することです。そのような比較言語学の作業手順を踏むことによってのみ、「日本語の起源」を解くことができるのです。日本語とオーストロネシア語族にみられる地名と人名に対して、そこにイ・シの相関をみたように日本語とオーストロネシア語族の間には深い関係、つまり同源関係が認められるのですから。
今回も時間に追われ、頭のなかもうまく整理できず宿題が残ってしまいましたが、このホームページを読んでいただいている皆さん方にもこれらの問題を考えていただければ幸いです。
次回は奄美・沖縄地方の琉球方言にひろくみられる太陽をあらわす「ティダ」の語源について考えます。更新は10月15日頃を予定しています。
1999.09.03 ichhan
追記1:ここまでの考察は以前ワープロで打っていた「ハ行音の問題について-「日本語起源論」解決に向かって」(初筆:1996.10.25)を今回大幅に加筆訂正したものです。
追記2:ハ行転呼音の変化についての新しい考察を次のページにのせました。(2003年12月1日)
追記3:ハ行音の変化についての新しい考察(暫定)を次のページにのせました。(2010年2月20日)